日本の色のルーツを探して 城 一夫[著]を読んだ感想【色について理解を深めたい人向け】

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書名:日本の色のルーツを探して

著者:城 一夫

協力:一般社団法人日本流行色協会

出版社:パイ インターナショナル

出版年:2017年3月19日

定価:1800円(税別)

はじめに

本書はわが国固有の文化と外来文化の導入によって生まれてくる文化の形態を「色彩」に絞って考えたらどうかとの疑問に端を達している。

現代から見て「日本の伝統色」といわれる色彩のルーツがどこからきて、どのように混じり合い、変化していったかを探ることが本書の原点である。

川の流れは数多い支流が集まってやがて大きな川になってくるという。

本書は「日本の色」という大きな流れのその源流を辿るささやかな旅であり、「現代の色彩」を把握する試みである。

日本の色のルーツを探して 冒頭より引用

率直な感想

ポップな表紙に反し、冒頭からいたって真面目な内容である。

さりとて学術書ほど堅い雰囲気は無い。

様々な時代の「色という色」が、図や写真などでふんだんに盛り込まれている為、読み進めるのが非常に楽しかった。

著者の専門が色彩文化・模様文化の研究である為、この一冊で多方面の文化や芸術をも一緒に学ぶきっかけが出来る。

ただ、当然のことながらあらゆるジャンルの「色彩」にテーマを絞っている為、知らない単語や語句などが膨大に出てくる。

ゆえに、一度気になりだすと本を読み進めるより先に、都度調べながら理解を深めることがメインになってしまうかもしれない。

それくらい、奥深い内容の一冊である。

目次

はじめに

色の語源としくみを探る

色の系譜を探る

の系譜

色(ピンク)の系譜

色の系譜

色の系譜

色の系譜

の系譜

の系譜

の系譜

の系譜

の系譜

の系譜

の系譜

の系譜

婆娑羅の系譜

主な参考文献

山と積乱雲

城 一夫 じょう・かずお

共立女子学園名誉教授。専門は色彩文化・模様文化の研究。『色彩の宇宙誌—色彩の文化史』『装飾文様の東と西』(明現社)、『西洋装飾文様事典』(朝倉書店)、『色の知識』『大江戸の色彩』(青幻舎)、『フランスの伝統色』『フランスの配色』『常識として知っておきたい美の概念60』『色で読み解く名画の歴史』『イタリアの伝統色』『フランスの装飾と文様』(バイ インターナショナル)など著作多数。

※本書は一般社団法人日本流行色協会の機関誌『流行色』の連載「日本の色のルーツを探る」(2006年547号〜2009年568号)をもとに、加筆・修正の上、書籍化したものです。

日本の色とルーツを探して 巻末より引用

この本と出会った経緯

かつて私が伝統工芸の仕事をしていた頃、色に関する見識が圧倒的に不足しているのを痛感していたので、それを補うためにと大型書店で探し出して購入したというのが経緯である。

名もなき様々な色を作っていた私にとって、「この色はこれがルーツ、あの色はあれがルーツ」と古代から近現代までに使われてきたものが様々な形で資料として登場してくるのが純粋に面白かったし、仕事にも直結して役に立った。

ちょっとした衝撃

私がいた業界内で常識とされている色の名称が、実は間違いだったということがあって。

例えば新橋色。

ずっと淡い群青色・・と認識していたのだけれども世間一般では全く違っていて、思わず二度見、三度見してしまったのを今でも鮮明に覚えている。

本当の新橋色は、明るい青緑色である。

大正は緑色の時代であった。政治とビジネスの中心であった銀座では、政財界の社交場である高級料亭があった新橋界隈が花柳界の中心となり、大正5年頃から、その新橋芸者が半襟や帯、附下などに明るい青緑を付けたので人目を引いた。これが「新橋色」という名称で一般婦女子に広まった。

日本の色のルーツを探して (P.140)より引用

これは大変良い勉強になりました。

本書には「大正緑」と「新橋色」の色見本、日本画の「春芳」(上村松園画 / 1940年 / 東京 山種美術館蔵)が掲示してあるので、とてもわかりやすい。

全250ページ強で割とコンパクトながら、中身は百科事典がごとく相当なボリュームなので、少しずつ調べながら読み進めると、ちょっとした物知り博士になれそうな良書である。