「日本人が最強の脳を持っている」[著]加藤俊徳 を読んだ感想 【脳を鍛えたいすべての人向け】

書名:日本人が最強の脳をもっている

著者:加藤俊徳

出版社:株式会社 幻冬舎

出版年:2016年3月15日

価格:1100円(税別)

脳には記憶や言語、運動、思考といった役割ごとに、担当する部位が存在します。これらを役割ごとに「脳番地」と名付けました。結論からいうと、この8つの脳番地(P13参照)をまんべんなく使いこなしていくことが、何歳になっても元気な脳でいるための秘訣です。ですから、若い頃によく勉強して、偏差値の高い大学に合格できたとしても、その後の人生で偏った使い方をして過ごせば脳は衰えていきます。逆に、幼い頃はパッとしなくても努力を積み重ねることで50を過ぎて成功を勝ち取ることもできます。生涯まんべんなく使うことが大切なのは、脳も筋肉も同じなのです。

日本人が最強の脳をもっている P.004より引用

率直な感想

毎日使っている、いやむしろ使わずにはいられないスマホやPCが脳を退化させる原因だと知ったら、あなたは使うのをやめますか?

本書では冒頭からIT世代が、今から習慣化しようとするには難しい内容の「脳を鍛える秘訣」が満載である。

それは、ちょっと前の日本人なら当たり前に出来ていた日常の習慣と言っても過言ではない、なにげない事である。

しかしながら、ITを駆使して生活するのが今や当たり前の現代人がこの秘訣を日常的に取り入れて生活するのは、不可能なのではないか?

そんな気がしてならなかった。

変わり種アジサイ

本書は2016年3月に初版が刊行されているので、現在は状況が違うのかもしれないが、脳ドックでは問題が無いのに日本人は不健康であるというのだ。

脳ドックで検査して、従来のように、「脳に病気がなく健康です」と医師に言われても安心してはいけないことを意味しています。「私は定期的に健康診断を受けていて、脳ドックもしっかりやっているから大丈夫だ」と感じている方もいるかもしれません。しかし、残念なことに多くの脳ドックで調べているのは腫瘍や血管障害などの病気の有無であり、「脳がどれだけ元気なのか」ということではないのです。「脳に問題はありません」という診断がそのまま、「あなたの脳はきちんと成長している元気な状態です」とはならないのです。

 日本人が最強の脳をもっている P.007~008より引用

脳がきちんと成長して元気な状態かどうかなんて、多分大半の人は気にしないのではないか?

だとしたら、「IT型認知症」になっていても疑問に思わず、なぜなのか調べたりもせずに思考停止状態で脳の不健康状態を益々加速させてしまうかもしれない。

そう思うと、冒頭から怖いなと感じざるを得なかった。

近年、アンデシュ・ハンセン氏が発表しスウェーデンを震撼させ、世界的ベストセラーになって日本に上陸した著書「スマホ脳」の内容が、裏付けられたなと思う。

もっとも、どちらが先か後かは調べていないからわからないけれども、読了していた「スマホ脳」が衝撃的な内容だったので興味が湧いていた。

スマホやPCは現代社会では必要なツールなので、私は共存の道を模索しようと思う。

そうすると、やはり脳トレに行き着くのではないか?

面倒でもやらざるを得ないと、感じざるを得ないかなと痛感してしまった。

目次

はじめに

脳番地図解

第1章 「和」の習慣が日本人の脳を救う

第2章 日本人が秘めている圧倒的な五大脳力

第3章 日本人の五大脳力を強化する和トレーニング

第4章 日本人の脳の弱点を知って強くする

あとがき

参考文献

【著者】加藤俊徳 (かとう・としのり)

新潟県生まれ。医学博士。加藤プラチナクリニック院長。株式会社「脳の学校」代表。昭和大学客員教授。14歳のときに「脳を鍛える方法」を知るために医学部への進学を決意する。昭和大学大学院医学研究科修了。1991年、子どもの脳活動も計測できる「fNIRS法」を発見。現在、世界700以上の研究施設で使用されている。1995年から2001年まで米国ミネソタ大学放射線科MR研究センターでアルツハイマー病や脳画像の研究に従事。帰国後、「脳の学校」「加藤プラチナクリニック」を開設。認知症や発達障害の研究・臨床活動の傍ら、胎児から超高齢者まで1万人以上のMRI脳画像とともにその人の生き方を分析。脳の成長を映像化する特許技術を開発。脳画像診断及び、脳の強化外来では脳の使い方を診断し、薬だけに頼らない画期的な脳鍛錬法を処方する。2016年、加齢型認知症と区別してIT型認知症を提唱。

ベストセラー「脳の強化書」シリーズ(あさ出版)、『家事で脳トレ65』(主婦の友社)、『認知症を寄せつけない60歳からの脳革命』(大和書房)、『脳コンディショニング』(かんき出版)、『Dr.クロワッサン 100歳までボケない脳トレ』(マガジンハウス)ほか著書多数。

この本と出会った経緯

脳の強化書シリーズとは別に、日本の習慣を題材として解説していたので、パラパラと立ち読みしたところ、面白かったので購入。

私が職人時代にやっていたこと、やらざるを得なかったこと、嫌々やっていたことが多数掲載されていたので、それらが結果的にどういう脳トレに結びついていたのか興味が湧いたということのもあって。

私を救ったひとこと

「見て盗め」は脳力をもっとも効率的に伸ばす

「一人前になるまで、親方のもとで修業をする」

「技は見て盗むもの」

「感覚で覚えろ」

職人の世界だけでなく、会社員の上司部下、先輩後輩といった間柄でもこうした形で仕事を覚えていく、というスタイルがかつての日本では主流だったと思います。

お気づきの方も多いかと思いますが、これはかなり脳を成長させる仕事の覚え方です。技を見て盗む、つまり手取り足取り教えてもらえるわけでもないし、「なぜ、こうするのか」という説明もなく、見たこと・感じたことを自分で考えながら理解していき、それを再現できるようになるのです。脳番地でいえば、視覚系、思考系、感情系、記憶系、理解系、運動系がフル稼働です。仕事の内容によっては音で判断することもあるでしょうから、聴覚系も重要です。

伝達系をあまり使わないので、職人さんに無口な人が多いという我々のイメージも、あながち間違ってはいないのでは、と思います。

こうした教え方は非常に時間がかかります。言葉で言えば、すぐ済むことをあえて自分で気づくまで待つスタイルは、教えられる方に本当の意味で技術を体得させ、脳を進化させるといえます。しかし、理解や上達の進度にも個人差があるので、いったいいつになったら一人前になるのかも予測が難しい。教える方にも、学ぶ方にも相当な忍耐力が求められます。

日本人が最強の脳をもっている 第2章 五大脳力 その2 育む力(P.052~P.053)より引用

これを読んだ瞬間、かつての地獄が走馬灯のように蘇ってきて目頭が熱くなった。

パワハラ・モラハラなんて言葉もなかった頃、「見て覚えろ・感覚で覚えろ」には、随分と苦労した思い出があるので。

私と同世代の人は、職種不問で大体こんな経験をしてきたんじゃないかなとすら思えるけれど。

また、そんな修業時代を長年経験してきただけに、今度は自分が教える番になった時、これをやっていたら若い人に散々ボロクソに言われマニュアルを作れだの言葉で言えだの、さんざん効率化を強調された記憶が。

他の同世代や年上の職人さんからも、似たような話はいくつか聞いたことがあり、皆一様に困惑していたことを記憶している。

私自身は修業時代、結果的に脳トレをしていたようなので、今思えば良かったというか理不尽・不条理な世界であったけれども報われた気がするが、下の世代は結局私が作らされたマニュアルの範囲内でしか仕事を覚えなかったので、恐らく大した脳トレにはなっていないように思う。

感覚で覚えたことをマニュアル化するのは、ちょっと考えたら分かるくらい大変なので必要最低限のことしか教えられないように思われるのだが、実際他の方はどうなんだろうか?

今はもう私は職人ではないので関係ないが、この頃に培われてきた経験は今でも役に立っているような気がする。

可愛らしいピンク色の紫陽花

意外なひとこと

 私は宗教の専門家ではないので、脳科学者としての視点から神道が脳にどのような影響を与えるのか、についてお話しいたします。

仏教もキリスト教もイスラム教も、「仏」「神」という祈る対象となる絶対的な存在があります。ところが、神道では「八百万の神」が存在し、神様はそこかしこに、いたるところにいらっしゃる。その見えない神様の存在を感じながら日々を暮らしているということは、理解系脳番地を使うことにつながります。

日本人が最強の脳をもっている 第2章 五大脳力 その4 形がないものを想定する力(P.070)より引用 

山や海、泉、岩、木々といった自然物に、人間が及ばぬ壮大な力が秘められているととらえ、そこに神を見出しながら生きる。これは脳全体をまんべんなく使える人にしかわからない感覚でしょう。

古の日本人がそのような生き方をしてきたのは、海に囲まれ、火山帯の上に国土があり、自然災害に見舞われやすかったことが影響していたのかもしれません。災害を「自然から人間へのメッセージ」と受け止める考え方や、山開きや海開きの際に神事を行う習慣は今も受け継がれています。

第2章 五大脳力 その4 形がないものを想定する力(P.075~P.076)より引用

これは、私に限らず日本人なら当たり前と思うことだけれども、改めて脳科学の観点から言われると意外だった。

特に日々お参りをするあなたは、本当に意外なのではないだろうか?

初日の出を見に行き、柏手を打ってお参りしたり、雷や稲妻を見て龍神様を意識したり。

また例えば、正月というのは歳神様をおもてなしするための期間であり、来て頂くのに失礼のないよう家中を清めるために大掃除をし、床の間に鏡餅をお供えし歳神様の依り代(よりしろ)とし、お越しになった歳神様にお供えするのがおせち料理であるなど、年末年始だけでも受け継がれてきた習慣は沢山あるなと。

全体的に、日本人に向いている脳トレが満載である。

ただ習慣化できるのかどうかは、年代によって変わるとは思うけれども。

そんなわけで、本書は結果的に斬新だと思った。