書名:日本3.0 2020年の人生戦略
著者:佐々木紀彦 NewsPicks編集長
出版社:幻冬舎
出版年:2017年1月25日
価格:1200円(税別)
おわりに:30代よ。いい子ちゃんを卒業せよ
この本を書くにあたり、私がつねに念頭に置いていたのは、30代の人たちです。この本は、いわば、30代のみなさんを鼓舞するための檄文のようなものです。
30代は、若手として許される最後の10年です。だからこそ、誰よりも大胆に貪欲に攻めるべきなのです。
若さは本当に一瞬です。LINEやフェイスブックで友達とメッセージを送り合ったり、ネットサーフィンをしていたりする間に、気がついたら40歳になってしまいます。そうなってからでは遅いのです。ネット上だけでは真の充実感も修羅場も味わえません。ネットをフル活用しながらも、ネット空間に逃げ込んではいけないのです。
20代以下の人たちは、完全なネットネイティブであるからこそ、上の世代にはない発想でどんどん世の中を切り開いていってほしい。
日本3.0 巻末(P.410~P.413)より引用
目次
率直な感想
叶うなら時間がたくさんある学生のうちに読んでおきたかった。
全体を通して読むと2020年の人生戦略の為の内容だけれども、「第5章 日本3.0と教育」(P.279~)に関していえばオッサン世代でも己の教養を深めたいという人ならば読む価値はある。
まあ私は、せいぜい自己満レベルの自己研鑽で終わりそうだが、脳みそにシワを沢山増やすこと位はできると思う。
でも、若い人なら話は別。
本書を生かすも殺すも読む人次第だと思う。
全編を通して多角度的に我が国『日本』について考察しているのだが、日本の将来を背負って立つ30代以下の若者へ向けた至高の指南書だと感じた。
私は別に著者に深い思い入れも無いしファンでも無いけれど、読了して思ったのは上記。
また、本書では様々な書籍が引用されているが、著者は未来を背負う若者たちは教養を身に付けるべきだと随所で声高に強調している。
本のサイズは文庫より少しだけ大きい位のコンパクトサイズながら内容は濃いので、持ち運びもしやすいし良書だと思った。
【目次】
はじめに:日本人よ。チャレンジ童貞を卒業せよ
第1章:日本3.0の始まり
第2章:日本3.0と国家
第3章:日本3.0と経済
第4章:日本3.0と仕事
第5章:日本3.0と教育
第6章:日本3.0とリーダー
おわりに:30代よ。いい子ちゃんを卒業せよ
【著者】佐々木紀彦 (ささき・のりひこ)
NewsPicks編集長。1979年福岡県生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業、スタンフォード大学大学院で修士号取得(国際政治経済専攻)。東洋経済新報社で自動車、IT業界などを担当。2012年11月、「東洋経済オンライン」編集長に就任。リニューアルから4ヶ月で同サイトをビジネス誌系サイトNo.1に導く。2014年7月から現職。著書に『米国製エリートは本当にすごいのか?』『5年後、メディアは稼げるか』がある。
この本と出会った経緯
書店でブラブラしていた時に、なんとなく出逢う。
購入の決め手はスタンフォード大生が読む教養書50冊(P.329)の一覧表があったから。
何冊か読んでいたけど、小学生の頃に児童書レベルでしか読んでいないから、大学生が読むような本ではない訳。
社会人になってからまともに読んだのはダンテの『神曲』ぐらいなので、他の教養書を全部読んでみようと思って購入。
衝撃〜もう取り返しがつかないなと悟った瞬間
読み進めるうちに、ギリギリ対象には入っているけれども、私は対象外だなぁと。
氷河期世代は教養を深めるために読みましょう。
本書は2017年に出版されているので、コロナ禍で一変してしまった昨今に改めて読むと違和感を感じる部分も多少ある。
しかしながら大筋は30代を鼓舞するための檄文には違いないと思うので、読んで実践していくのが最良かと。
ハーバードに惹かれた解説
あと、ハーバード大学の新しい学部教育プログラム(P.312~)に関する解説は面白い。
「ものを書く」は教養の柱
学位取得のために必要になるのは、専攻、外国語、エクスポジトリー・ライティング(説明文)、一般教養の4つです。
このうち、専攻については約50の分野があり、2年生の半ばまでにいずれかを選択します。まさに ”知のデパート” と言える豊富なバラエティです。社会科学、自然科学、人文科学まであらゆる専門がそろっています。
学生は自分の興味のある分野を2年以上かけてじっくり選ぶことができます。そして、自分は何が好きか、何に向いているかを模索することができるのです。この自由度の高さが、受験時に学部が決まってしまう日本との決定的な差です。
専攻の他に義務づけられる科目としては「外国語」があります。3年生の1学期までに、ひとつの外国語について、一定の基準を超えなければなりません。
もうひとつの必修は「エクスポジトリー・ライティング」です。これは直訳すると「説明文」となりますが、その意味するところは、前提知識のない人に対して、物事を的確かつわかりやすく伝える技術を指します。言い換えれば、どうすれば池上彰さんみたいになれるかを学ぶのです。
日本3.0 第5章(p.312~p.314)より引用
これを読むと、ハーバード大学がものすごく魅力的だと分かる。
日本は受験時に学部が決まってしまうのはおかしいと思うし、池上彰さんみたいにどんな人にでも解説出来る様に私はなりたい。何故なら、すごく大事な技術だと思うから。
もし仮に日本の大学がハーバード大学みたいであったなら、過去の私は理系から文転してはいないだろうし、理系だろうと文系だろうと将来のことなど受験生の段階で決められる訳無いのだから、無知でバカではあったけれども色々な選択肢を学びながら慎重に自分の進路を見極めていくことがきっと出来たに違いない。
そう考えると、高卒や中卒で進路を決める人たちはすごく決断力があるなと思える。
そもそも、説明するということは誰に説明するかでも全然変わってくる。
著者が池上彰さんを例として引っ張り出してきたことは、個人的には秀逸だと思った。
何故なら、老若男女全てには理解されないであろうけど、本書は30代の若者向けである訳だから本書の様な意識高い系の本を読む人たちには一瞬で伝わるであろう表現だと思うから。
余談だが、私は職人時代に師匠から「誰かに説明をする時は、幼稚園児でも理解出来る内容で説明しろ。」と言われていた。
職人世界にはいろんな年齢層の人が働いているし最終学歴もピンキリなので、当時私はきっと小難しい表現なども使用しながら説明していたのであろう。
内外からクレームが来ていたらしい。言ってる意味が分からないと。
なので、それ以来難しい表現は使わない様にしている。職人を辞めた今でも。
でも逆にそれは難しいので、随分と頭を悩ませることもしばしば。
そういう苦悩をハーバード大学では体験出来るのかは知らないけれども、長い人生でとても役に立つ技術だと私は思う。
また、スタンフォード大学の学際的なプログラム(P.324~)も面白い。
何が面白いのかは、本書で読み取ってみて欲しい。
日本の大学も、こうだと良いのにな。
実践している日本の大学は今現在あるのだろうか?
もしあったら、失礼しました。
でも、上位校だけではなくて、偏差値50以下の大学でもやったらどうなるかな?
余程の底辺でもない限り、せっかく高校受験で脳にシワを増やしまくったのに大学生になった途端、諸外国の大学生に比べて勉強しなくなる率が圧倒的に高くなるのは勿体ないと思うので無理やりにでもやってみたら、きっと面白い結果が得られるのではないだろうか?。
なお、各章のおわりに「未来を考えるための10冊の本」がそれぞれ紹介されているので親切だと思った。