【美術愛好家、精緻な作品が好きな人向け】【図録】扇子 忠[監修]「皇室のボンボニエール」を見た感想

扇子 忠[監修]皇室のボンボニエール

書名:皇室のボンボニエール

監修:扇子 忠

出版社:阿部出版株式会社

出版年:2009年5月10日

価格:2800円(税別)

※現在、増補新版が発行されている関係で本記事とは出版年と価格の違う物があります。

増補新版

出版年:2019年4月24日頃

価格:3300円(税込)

読みやすさ
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内容
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実用性
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値段
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オススメ度
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総合評価
 (4.5)

ボンボニエールとは?

「ボンボニエール」という言葉は、フランス語から来たものでボンボンのような砂糖菓子を入れる容器のことをいいます。日本ではあまり一般的な言葉ではありませんが、19世紀末以来、日本の皇室が「お遣い物」にされてきた小さなギフト・ボックスのことを指して使われてきました。

これらは、天皇のご即位をはじめ、皇族のご誕生、ご成年、ご成婚などのご慶事の式典の際に、宮中で催される祝宴に招待された特別な方々に記念品として贈られてきました。これらの小箱には、折々のご慶事の慶びを込めた小さな五色の金平糖が満たされていることから、ボンボニエールと呼ばれてきたようです。このような慣習が日本の皇室に定着したのは19世紀末頃で、現在もなお続いているのです。

ボンボニエールは、大半のものが銀製ですが、時には真鍮製や陶製、竹や木に漆を塗ったものなどもあります。様々な動物や植物、そして歴史にまつわる文物などがモチーフになり、優美な小箱として作り出されてきました。また、それらの美麗な本体には、天皇家の十六菊花弁のご紋や旧宮家のご紋があしらわれたものが多く見られます。

ボンボニエールは、宮中の特別な行事で、限られた人たちだけにご下賜されてきたため、一般の人たちの目に触れることは極めて稀なことです。この図録から、閉ざされた皇室が育まれてきた日本の伝統工芸の粋を垣間見て戴ければ幸甚に存じます。

皇室のボンボニエール 冒頭より引用

率直な感想

昔の金工職人はすごい!もうその一言に尽きる。

もちろん今現在の金工職人もすごいけど、今現在は機械を導入したり分業制になっていることを、昔は一人の職人さんが手作りで全工程やっていたというのがね。

しかも、当時ボンボニエールを作っていた職人は、明治維新の廃刀令により職を失った刀職人だそうで。

刀職人といえば、その歴史たるや相当な長い歴史を誇る日本の伝統工芸であった訳だから、きっとこの小さなボンボニエールを作ることになった時、刀職人の意地やプライドといった職人魂を爆発させ全身全霊を注ぎ込み、腕をふるっていたんじゃないかなあ?

大量生産できないから分業制になったというのは金工に限らず、どの職人世界でも同じだけれども、このボンボニエールに関しては「いよっ!ボンボニエール職人、良い仕事してますねえ!!」と、作品の写真を見るたびに思わずにはいられなかった。

金平糖が20〜30粒くらいしか入らないであろう小箱に、精緻の極みとも言える超リアルな彫刻を施しているので、ひとつ作るのに途方もない時間と労力がかかったはず。

しかもそれを数十個から数千個も手作業で作っちゃうんだから、とてつもなくすごい。

尊敬すらしてしまう域とは正にこの事。

これもらえた人たち、嬉しかっただろうなあ。

そんな、我が国が誇る、昔の金工職人たちが作ってきたボンボニエールという稀有なモノの作品集と言えよう。

目次

皇室のボンボニエールとは?

What are Bonbonnieres?

図版

 天皇家

 秩父宮家

 高松宮家

 三笠宮家

 共通紋

 有栖川家

 伏見宮家

 梨本宮家

 山階宮家

 久爾宮家

 小松宮家

 北白川宮家

 閑院宮家

 東伏見宮家

 朝香宮家

 東久爾宮家

 竹田宮家

 華頂宮家

 無紋

 旧華族・その他の紋

天皇家系図 / 旧宮家系図

「皇室のボンボニエール」解説 扇子 忠

明治維新後の天皇家のご慶事

明治維新後の宮家のご慶事

【監修】扇子 忠(せんすただし)

1940年京都市生れ。立教大学法学部卒業。IT関連の外資系企業や国内上場企業などで営業に従事し、世界60数カ国のビジネス経験を踏まえてフリー・コンサルタントとして独立。大手企業や中小企業の顧問を兼務し、経営者向け講演活動で全国に足を運ぶ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

この本と出会った経緯

宮家や旧華族の家紋が知りたくて書店を徘徊していて、偶然発見。

家紋よりも今まで見たことが無かった精緻な作品たちの、まばゆさ加減に一瞬で心を奪われてしまった為、絶対買って帰ろうと思ったのが経緯。

皇室のボンボニエール、それは正に崇高なる稀有な美術品である。

衝撃

皇室にはこんな奥ゆかしい文化がある事、それが既に衝撃。

ボンボニエールの歴史はわずか130年あまりなので我々一般人が知らないのも当然といえば当然だが、まさか我が国にかつてこれほどまでの精緻な腕前の工芸家集団が存在していたとは驚かずにはいられない。

もし叶うなら私は現物を自身の肉眼で見たいし、実際に手にとって虫眼鏡や胃カメラなどを駆使していろんな見方をしてみたい。

各作品にまつわる歴史が偉大

私が特に気になった物をいくつか紹介しよう。

とは言っても、写真の無断転載はできないので文字情報だけの紹介ではあるけれども。

なお、寸法はセンチメートルである。

10 鶴亀像形

明治27年3月9日

明治天皇大婚25年祝典

「明治二十七年三月九日」

径5.0 最大幅7.3 高11.4

当夜宮中饗宴の列席者534人の内、

天皇玉座に陪席した在日13ヵ国の公

使夫妻並びに随員57名と日本の高位

高官に下賜された。

皇室のボンボニエール p.14より引用

ボンボニエールの上に亀が二匹。そしてその真横で背の高い鶴が自分の足元にいる亀を上から眺めている。

鶴は頭が赤いし羽根の造形も細かい。亀も細かい。

動物の立体造形は他にもいくつかあるが、これはその走り。

14 柏葉筥形

大正4年11月17日

大正大礼大饗第2日夜宴

「純銀小林製」と「服部製 純銀」

ほか2種あり

6.1×6.05 高2.5

当日、京都二条離宮(城)に招待され

た2800人の為に、4軒の業者が当該ボ

ンボニエールの制作に従事した。裏底

に四種類の違う刻印のものが現存し

ている。

皇室のボンボニエール p.16より引用

柏の葉で菱形の箱が形成されており、蓋の中央には天皇家の十六花弁の菊すなわち「菊のご紋」である。

菊のご紋は金色。

蓋の柏葉は菊のご紋を中心に十字に広がっており、語弊があるかもしれないが格好いい。

赤い紐で蓋を留める仕様のようだ。

前述の鶴亀像形については在日英国公使として駐在していたヒュー・フレイザー卿の夫人、メアリー・フレイザー氏の著書『英国公使夫人の見た明治日本』(横山俊夫訳、淡交社)にも書かれているとある。

「客人ひとりひとりの皿のかたわらには、ボンボン入れがあり、その蓋は銀と琺瑯で精巧につくられたミニチュアの鶴と亀でできていました。これらは天皇陛下より客人への贈り物であり、私にとっては手離しがたい宝のひとつになっています。」

皇室のボンボニエール p.110 解説 扇子 忠(ボンボニエール研究家)より引用

ちなみに鶴亀像形は無いようだが、秩父宮妃殿下より寄贈された約150点ものボンボニエールが現在、宮内庁三の丸尚蔵館で所蔵されているとの事である。

私は行ったことがないので何が展示されているのか、実際にボンボニエールを見ることができるのか分からないのであしからず。

しかしながら、コロナ禍が過ぎ去った暁には是非とも本書を携行して、拝観に行ってみたくなる。

おそらく本書を見た人なら大抵はそう思えるのでは?と思う。